第50章 断るのは難しい

桐生冬紀は、わずかに目を瞬いた。

黒崎悠真が少女の手を取り、自分の正面へ引き寄せる。声音は穏やかだった。

「こら、騒ぐな。友だちがいるの、見えないのか? 恥ずかしいだろ」

少女は唇を尖らせて不満げに言う。

「ずっと探してたんだよ!」

その距離感は、ただの知り合いとは思えない。――恋人、なのか。

桐生冬紀が胸の内でそう当たりをつけた、その直後。黒崎悠真が言った。

「話はあとで。行儀よくしろ。まず桐生さんに挨拶しなさい。桐生さん、妹の黒崎薫です」

妹――そういうことか。

桐生冬紀が視線を向けると、少女もこちらを見た。互いに目が合った瞬間、二人とも固まる。

黒崎薫が桐生冬紀を指...

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