第56章 二度目の出向

桐生冬紀が顔を上げると、秘書が立っていた。口元だけ笑って、目は笑っていない。

「桐生秘書、これ、早めに処理してください。すぐ使いますから」

桐生冬紀は書類をめくり、ざっと目を通す。近藤社長案件の契約書だ。ぱたん、と閉じた。

「この案件、あなたが担当でしょう。私は最後の会談に同席するだけ」

秘書は腕を組む。

「でも御堂社長が言ってました。あなたは専属秘書。秘書室の書類は全部、あなたが管理するって」

「だったら御堂社長本人に言わせて。これも私がやれって。そう言われたら、責任持ってやる」

桐生冬紀は書類をそのまま相手の席へ放り投げた。ついでに、机の角に置かれていたコップが床へ落ちて、...

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