第61章 お母さん

翌日。桐生冬紀はいつもどおり出社し、保温ボトルを片手に給湯室で湯を汲んだ。まだ始業前。彼女は戸棚にもたれ、スマホを取り出して一本、電話をかける。

あの日、御堂怜央が「おまえの母親」の話を口にしてから、冬紀の胸は落ち着かなかった。帰宅してから二日かけて手がかりを探し、昔の近所の人――近藤の連絡先をようやく掘り当てたのだ。

コールがつながる。

「はい、どちらさま?」

「近藤さん。冬紀です」

「ああ、冬紀か。どうして私の番号を知ってるの?」

「……前に、控えてたので」

「それで、どうしたの?」

冬紀は声を落とす。

「うちの両親、まだ近藤さんのご近所ですか。最近、どうしてるか分かり...

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