第63章 唯一

御堂怜央は昔から、感情も表情も薄い男だった。

青木辰樹と落ち合う店に着くと、当の青木は頬張るのに必死で、まるで飢えた犬みたいにパンをかじっている。

怜央は彼を二、三秒だけ観察し、無言で席についた。

青木はテーブルの書類に顎をしゃくり、口の中のものを飲み込みきらないまま言う。

「欲しい資料はそこ。勝手に見て。俺、昨日の夜から何も食ってない。餓死する」

「家で誰も飯作ってくれないの? 母親が嫁を見つけたって言ってなかった?」

怜央はファイルを開き、ページをめくりながら、雑談みたいに投げた。

青木はその言葉だけで顔をしかめた。

婚約者を名乗って勝手に家へ転がり込んできた女のことを思...

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