第69章 彼女を裏切る

桐生冬紀が席に戻って仕事を再開すると、同僚たちが次々に寄ってきては慰めたり、謝ったりした。松本小夜の言葉を鵜呑みにした自分たちが悪かった、と。

桐生冬紀は「大丈夫です」とだけ返した。

けれど黒崎薫だけは、いつもと違って近寄ってこない。自分のデスクで俯いたまま、何かをいじっている。機嫌が悪そうだった。

さっき、桐生冬紀の噂を必死に否定するため、黒崎薫は執事に命じてホテルの監視映像を押さえさせた。警察より早く、その映像を手に入れていた。

――なのに。

映像の中に、御堂怜央がいた。

そして、彼は桐生冬紀と一緒にエレベーターへ乗り込み、上階へ上がっていく。部屋のあるフロアへ。

男女が二...

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