第73章 彼女は浮気相手

桐生冬紀は、はっとして立ち尽くした。彼女たちはもう廊下の突き当たりを曲がり、姿が見えない。

知り合いでもない。接点なんて皆無だ。なのに突然、罵られた――いや、あれは本当に自分に向けられた言葉だったのか?

その場で少し迷った末、結局、追いかけて言い返すのはやめた。

部屋へ戻る足取りは変わらないのに、胸のあたりだけが、じわりと重い。

熱いシャワーを浴びて着替え、髪を乾かしていると、急にくしゃみが立て続けに出た。ぞくり、と背筋が震える。

朝から少し寒気はあった。大したことないと思っていたのに、さっき水遊びをして、風にも当たったせいだろう。

額に手を当てる。……まだ熱はない。

浴室を出...

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