第78章 力になれない

スタッフが二人の前にコーヒーを運んできた。

御堂怜央は手を伸ばし、小さなトングで角砂糖をひとかけ摘まむと、カップへ落とす。ちゃぷん、と波紋が幾重にも広がった。

スプーンで静かにかき混ぜる。

スーツの袖口がわずかに捲れ、腕時計が覗く。派手さはないのに、値の張る気配だけが滲んでいた。

伏せたまつげの下、瞳の奥は読めない。

「旧市街プロジェクトは良い案件だ。うちだけじゃない。高橋キャピタルも狙ってる」

黒崎友也が、焦らすでもなく受ける。

「だからこそ、黒崎グループが一歩引けば、青雲の勝ち目は大きくなる」

御堂怜央はスプーンを離し、顔を上げた。視線は平坦で、温度がない。

「黒崎社長...

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