第80章 戻ってくるかどうか分からない

そのとき、主催者が挨拶にやってきた。

「怜央!」

御堂怜央は微笑み、桐生冬紀にだけ聞こえる声で囁く。

「このあとダンスが始まったら、左へ行け。俺が引っ張る」

左へ行けって、どういう意味――。冬紀が首を傾げたところで、すでに年配の男が目の前まで来てしまい、問い返す言葉は喉の奥へ飲み込むしかなかった。

「榎本社長」

御堂怜央が軽く会釈する。

男は六十手前。いかにも人当たりのいい顔で、わざとらしく肩をすくめた。

「まったくおまえは。みんなここに来るのは楽しみに来てるんだぞ。それを、おまえがいきなり脅して追い払うんだからな」

叱っているようで、口調はどこか冗談めいている。後輩を可愛...

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