第81章 誰の手をつかんだのか

「……何?」

桐生冬紀は、なぜここで榎本時哉の名が出てくるのか、見当もつかなかった。

榎本時哉とのことなんて、高校時代の話だ。あの頃は、彼とも御堂怜央とも、そもそも接点がない。

「御堂社長のおっしゃる意味が分かりません」

御堂怜央は表情ひとつ変えない。

「本当に分からないなら、それでいい」

――いや、むしろ分かるな、と言われているような。

桐生冬紀が理解できずにいると、御堂怜央は彼女の探るような視線を冷たく受け止め、ふいに苛立ったように眉間を寄せた。

腰に回していた手が離れる。

「しばらく俺の視界に入るな」

それだけ吐き捨て、彼はさっさと歩き去った。

桐生冬紀は呆然と、...

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