第84章 不満か

ダンスは途切れず続いていた。けれど桐生冬紀と黒崎悠真の手はもともと強く結ばれていたわけじゃない。御堂怜央にぐいと引かれた瞬間、あっさりほどけた。

御堂怜央は流れのまま鈴奈を黒崎悠真のほうへ押しやり、そのまま桐生冬紀の腰を抱き寄せる。

不意を突かれて、桐生冬紀は御堂怜央の正面へ引き戻された。呆然と見上げると、彼の表情は淡々としていて、感情の起伏が見えない。

――私、彼の目には物なんだ。

要らないときは適当に放り投げ、欲しくなったら力ずくで取り返す。

そこに、尊重なんて欠片もない。

桐生冬紀は声を落とした。

「御堂社長、何をなさってるんですか」

「何だ? おまえの黒崎教授と引き離...

ログインして続きを読む