第9章 幸運に恵まれる

桐生冬紀は胸の奥に溜まっていた息を、ふうっと吐き出した。道を渡り、向かいの薬局で薬を買う。

会計の最中、着信が入った。御堂怜央の母――御堂奥さんからだ。

「冬紀、最近どう? 全然うちに顔出さないじゃない」

桐生冬紀は口元だけで笑った。

「元気です。少し仕事が立て込んでいて……最近ようやく落ち着いたので、週末に伺いますね」

「落ち着いたなら週末まで待たないで。今夜よ、怜央と一緒に帰ってきなさい。あなたたちの好きなもの、私が作るから」

「分かりました。御堂社長に伝えます」

御堂奥さんが、たしなめるように言う。

「いつまでも御堂社長、御堂社長って呼ばないの。よそよそしいわ。あなたた...

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