第90章 風呂上がりの男女

青木辰樹が成果ゼロのままPCを落とそうとした、その背後で、見物していた女がふいに口を挟んだ。

「この時間……8時半くらい。あのとき、落ちる音がした気がするんですけど……」

女は友人に向けて話していたらしく、声量は大きくない。なのに、数メートル離れた御堂怜央がそれを拾った。彼はすっと振り返る。

「……何を聞いた?」

低く沈んだ声。

女は一瞬きょとんとして、ためらいがちに続けた。

「8時半に、3階の部屋へ忘れ物を取りに戻って……それで宴会場に戻る途中、ある部屋の前を通ったんです。そしたら中から言い争う声がして、そのあと……『ぽちゃん』って。水に落ちたみたいな音で……」

御堂怜央の目...

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