第96章 とても気が利く

「……」

桐生冬紀はそっと目を閉じた。たかが熱を出しただけなのに、どうしてこんな初歩的なミスをやらかしたのか、自分でも理解できない。

少し考えてから、女性スタッフに尋ねる。

「すみません。お洋服、何かお借りできますか? 何でも大丈夫です」

とにかく、裸のまま黒崎悠真の前に出るわけにはいかない。

女性スタッフは一瞬きょとんとしてから言った。

「私が着ているこういう制服でもよろしいですか?」

「はい、助かります」

「では10分ほどお待ちください。すぐ取ってきます」

「ありがとうございます」

女性スタッフは浴室を出ていき、ついでに寝室のドアも静かに閉めてくれた。

桐生冬紀は結...

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