第98章 足を引っかける

桐生冬紀の胸に、ふと疑念が差した。

取引の話をしていた頃、黒崎友也は彼女の入社に明らかに興味を示していた。昨夜だって、条件を忘れるなと念を押してきたくらいだ。

それなのに、なぜ今日になってやんわり断ってきたのか。

そして彼女はまだ知らない。厄介ごとは、ここからが本番だということを。

桐生冬紀はスーツケースを引き、タクシーでマンションへ戻った。

鍵を差し込み、ドアを開けた瞬間――バンッ!

乾いた破裂音に、心臓が跳ねる。

次の瞬間、色とりどりの紙吹雪がぱらぱらと降り注ぎ、本田由衣が両手を上げて叫んだ。

「おめでとう! 完全に解放されたね!」

桐生冬紀は吹き出す。

「大げさすぎ...

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