第99章 業界から締め出す

桐生冬紀は一拍置いてから、「大丈夫です。また都合が合うときに」と返した。

急な仕事で残業になるなんて、よくあることだ。冬紀も最初は深く考えず、洗面所で水を汲んで窓辺の観葉植物に注いだ。

ミントだった。生まれつき、ほのかに――ひんやりとした香りをまとっている。

その冷たい匂いが鼻先をくすぐった瞬間、胸の奥がふっと動く。冬紀はもう一度スマホを取り上げ、人事担当にメッセージを送った。

「そういえば梨花さん、月曜は高橋グループに直接伺って入社手続きで大丈夫ですか?」

三十分。

返事はない。

ミントの涼香を吸い込むほど、心がじわりと沈んでいく。

昼になっても冬紀が出かける気配を見せない...

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