第111章

朝比奈澪は、桐生晴臣が小さい頃から見守ってきた子だ。

だから誰よりも分かっている。澪がどれほど純粋で、疑うことを知らないかを。

そして――澪と神宮寺玲央は、住む世界がまるで違う。

まして神宮寺家のような名門は、外から見えるほど澄んだ場所じゃない。大きな染め壺だ。入った瞬間、色が移る。

晴臣は玲央の身辺を調べていた。

神宮寺玲央は、生まれそのものが祝福されなかった男だ。両親は、彼を「息子」として認めていない。

二房は表向きこそ波風を立てないが、腹の底ではずっと神宮寺ホールディングスの継承権を狙っている。

そんな環境で、澪が一生を過ごすなんて――考えただけで胸が痛んだ。

この数年...

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