第30章
朝比奈澪ははっと我に返った。さっきまでベッド脇で服を脱いでいたはずの男が、いつの間にか目の前に立っている。
顔を上げた瞬間、漆黒の瞳とぶつかった。
底の見えない闇。古い淵のように深く、じわりと危険な匂いを孕んでいる。
盗み見を現行犯で押さえられたせいで、澪の頬がかっと熱くなる。視線を泳がせながら、
「だ、旦那さま……」
神宮寺玲央は伏し目がちに、澪の前で足を止めた。
整った顔立ち。澄んだ杏眼には薄い水膜がかかり、唇は赤く、怯えたみたいに少しだけ尖っている。
汚れのない瞳だった。混じり気のない宝石みたいに、透きとおっていて、そこに邪な影はひとつもない。
――だからこそ。
その...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 第31章
32. 第32章
33. 第33章
34. 第34章
35. 第35章
36. 第36章
37. 第37章
38. 第38章
39. 第39章
40. 第40章
41. 第41章
42. 第42章
43. 第43章
44. 第44章
45. 第45章
46. 第46章
47. 第47章
48. 第48章
49. 第49章
50. 第50章
51. 第51章
52. 第52章
53. 第53章
54. 第54章
55. 第55章
56. 第56章
57. 第57章
58. 第58章
59. 第59章
60. 第60章
縮小
拡大
