第36章

朝比奈澪が去っていく背中を見送りながら、早川隼人は思わずくすりと笑い、胸の内でひそかに感心した。

あんなふうに怒り顔のまま、うちの社長の名を呼び捨てにできる人間なんて――今まで数えるほどしか見たことがない。

神宮寺ホールディングスは、S市随一の財閥。

神宮寺家の力は桁違いで、名門の中でも頭ひとつ抜けている。

だから普通の人間は、玲央様にそう簡単に手を出せない。

怒らせたあとの代償を、誰も払えないからだ。

それでも奥様は平然と噛みついた。

――つまり、それだけ奥様の存在が玲央様の中で重いってことだ。

冷酷で、決断は一刀両断。

そんな玲央様にも、春が来る日があるなんて。

……...

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