第57章

神宮寺玲央は伏せたままの瞳を上げない。漆黒の奥に満ちているのは、痛いほどの慈しみだった。

――この子は、掌の上で大事にされるべきだ。

甘やかされて、守られて、笑っていればいい。

こんな目に遭うなんて、あっていいはずがない。

朝比奈家め。……本当に、許せない。

「澪。復讐したいか」

朝比奈澪は顔を上げ、戸惑いながら神宮寺玲央を見た。

玲央は喉の奥で低く笑う。ざらついた指の腹が、少女の目尻の柔らかな肌をそっと撫でた。低い声には、刃のような危うさが滲む。

「一週間後、神崎家と朝比奈家が婚約パーティーをやる。……行きたいか」

「行きたい!」

澪が朝比奈家を出なかったのは、行き場が...

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