第60章

神宮寺蓮司は、朝比奈澪のことをずっと「まだ子どもみたいな女の子」だと思っていた。

性格は柔らかくて、すぐ人にくっつく。甘えるのも上手い。

けれど、ここ最近一緒に過ごしているうちに、蓮司は自分が彼女をまるで掴めていないことに気づいた。

澪には、言葉にしづらい独特の空気がある。

神宮寺玲央のそばでは、ふわふわ甘くて、やたらと懐く小さな恋人みたいなのに。

祖父の前では、従順でおとなしい「いい子」になる。

神崎教授のような先輩を前にすると、所作はきれいで、礼儀正しい。なのに距離感だけはひやりと一定で、それが骨の髄まで染みついているみたいだった。

そして――実験に入った瞬間、まるで別人に...

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