第61章

夜。

朝比奈澪が研究室から出てくると、どこか気だるげで、磁器みたいに白い小さな顔には疲労がべったり張りついていた。

半分ほど瞼を落としたまま、澪は直感に任せて足を進める。

実験棟を出た、その瞬間だった。

行き交う学生たちが、やけにこちらを見ている。

数人で顔を寄せ合い、ひそひそと何かを囁く。

ちらり、ちらりと指まで差して――澪のほうへ。

(……?)

本来なら、気にも留めない。

そのまま立ち去るつもりで足を上げた、その時。

背後から、耳をつんざくような怒号が飛んだ。

「朝比奈澪、このクズ! うちの女神いじめやがって!」

澪が振り返ると、ひとりの女がずかずかと迫ってきた。...

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