第70章

朝比奈澪が嬉しそうに食べているのを見ると、神宮寺玲央の口元もつられて、ほんの少しだけ上がった。

椅子に深くもたれ、箸で料理をつまむ澪の指先を、視線が追いかける。

ふいに胸の奥へ、ひとつの思いが浮かんだ。

――よかった。十七年という時間が空いても、俺の宝物は結局、俺のところへ戻ってきた。

そこで、神宮寺玲央は神崎怜司の顔を思い出す。

……あいつが澪の良さに気づいていなかったのも、よかった。もし気づいていたら――。

朝比奈澪と神崎怜司の婚約。

その言葉を思い浮かべただけで、心臓の奥がきゅう、と酸っぱくなる。

澪は、誰よりも大切で、誰よりも価値がある。

神崎怜司なんかが、釣り合う...

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