第74章

「テーブルに置いておけ」

神宮寺玲央は振り返りもせず、冷えた声でそれだけ命じた。

澄み切った低音。そこに、刃のような殺気が一筋混じる。

カップを運ぶ使用人の指先が思わず震え、コーヒーが危うく揺れた。

書斎を出た瞬間、使用人は肺の奥に溜めていた息を一気に吐き出す。

足早に階段を下りる背中からは、安堵がだだ漏れだった。

玲央様、ほんと怖すぎる……うぅ……

書斎。

神宮寺玲央はその場にしばらく立ち尽くし、頭の中で、事前に洗い出した資料を反芻していた。

朝比奈澪は朝比奈家に引き取られてから、無視され、嘲られ、挙げ句の果てには朝比奈瑠璃に執拗に陥れられてきた。

朝比奈家の人間で、彼...

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