第76章

朝比奈蓮は眉をひそめ、ノックの力を強めた。

だが、部屋の中は相変わらず、物音ひとつしない。

扉に耳を当ててしばらく様子をうかがった瞬間、胸の奥がひやりとした。

瑠璃は先天性の心臓病持ちだ。まさか――発作……?

「……っ!」

朝比奈蓮は堪えきれず、扉を蹴り破る勢いで開け放った。

ベッドの上には、朝比奈瑠璃が横たわっていた。顔色は紙みたいに白く、息も頼りない。全身から、力の抜けた病人特有の気配が滲んでいる。

「瑠璃!」

蓮は駆け寄り、冷えきった彼女の手首を掴んだ。瞳の奥に焦りと不安が渦巻く。

「瑠璃、どうした? 発作か? 頼む、兄ちゃんを怖がらせるな!」

瑠璃はかすかに瞼を持...

ログインして続きを読む