第9章

神宮寺玲央の姿を見つけた瞬間、朝比奈澪の顔がぱっと花開いた。

「旦那さま!」

鈴を転がしたような声。抑えきれない嬉しさと驚きが、そのまま弾けていた。

玲央の視線が、己の掌を握る白く柔らかな小さな手に落ちる。わずかに、瞳が止まった。

それを見た使用人たちは、反射的に息を呑む。

食堂の空気が、ぴたりと固まった。誰もが、二人の繋がれた手から目を逸らせない。

S市で知らぬ者はいない。玲央様は女を寄せつけないことで有名で、気性は陰に沈み、苛烈。加えて、触れられることを極端に嫌う――そう囁かれている。

触れた女は、碌な目に遭わない。

なのに、この女は。

玲央様の手を握った。

投げ飛ば...

ログインして続きを読む