第93章

男の低く冷えた声が、唐突に響いた。

「悪いが、どいてくれ」

女は憑かれたみたいに、素直に立ち上がる。

神宮寺玲央は身をかがめ、朝比奈澪をソファへそっと座らせた。次いで片膝をつき、手を伸ばして澪の細い足首を包むように握る。

その仕草に、周囲がざわめき、きゃっと小さな悲鳴が上がった。

神宮寺玲央は彫りの深い端正な顔立ちで、近寄りがたいほどの威圧感を纏っている。誰もが無意識に距離を取る、支配者の気配。

――なのに。

片膝をつき、まるで宝物に触れるみたいに優しく足首を確かめる、その表情は甘く、どこか切実で。

それを見た女たちの胸が、一斉に騒ぎ出す。

誰が言った、神宮寺玲央は今にも息...

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