第5章

綾辻穂弥視点

午後三時、私は綾辻グループ本社の役員会議室で、神崎空の隣に座っていた。満面の笑みを浮かべて入ってくる叔父さんの姿を見て、私は言い知れぬ不安に襲われた。

「綾辻君、神崎君、時間を作ってくれてありがとう」

綾辻隆の声は、不自然なほど陽気だった。

「そろそろ若い世代に家業を継いでもらおうと思ってね」

心臓が跳ねた。

「どういうことですか、叔父さん?」

私は声を平静に保とうとしたが、指はすでに無意識にこわばっていた。

「会社の再編だ」

綾辻隆は私たちの向かいに腰を下ろした。

「私が一線を退く間、君たち二人で共同経営してもらう。何と言っても、君たち二人がこ...

ログインして続きを読む