第32章

黒宮司奈は床にへたり込み、半泣きでしばらく粘っていた。けれど凛奈は一切取り合わない。カメラマンも二枚押さえただけで別のカットへ移ってしまい、司奈だけが場違いに取り残される。

気まずさに耐えきれず、司奈は自分で床を押して立ち上がった。スカートについた埃をぱんぱんと払う。

「お姉ちゃん……私、見たくないんだよね。じゃあ、別の部屋で片づけるね」

言い終えると、俯いたまま涙をぬぐい、足早に去っていった。

凛奈は――視線すら向けない。

     ◆

一方、レンガ工場へレンガを引き取りに行く道中。

三輪車は田舎道をがたがたと揺れながら進んでいた。前でハンドルを握るのは神野怜司。荷台に腰を下...

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