第54章

凛奈は眉をつり上げた。「いいよ」

そう言って手を伸ばし、カメラのスイッチを押すふりをする。

実際にはレンズを手で覆っただけだった。映像は真っ暗になるが、音声はそのまま残る。

配信が切れたと思い込んだ杉山主任は、顔に貼りつけていた笑みを少しだけ本物に変え、手のひらで奥を促した。

「どうぞ」

凛奈が後ろに続いて事務室へ入る。杉山主任は扉を閉め、彼女にお茶を注いだ。

「凛奈さん、単刀直入に言います」杉山主任は向かいに腰を下ろし、いかにもな営業スマイルを浮かべる。「ご実家のほうから、もう私に話は来ています」

「お父上のご意向はこうです。身内同士なんだから、そこまで拗らせる必要はない、と...

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