第59章

助理との通話を切ると、神野怜司は一瞬たりとも迷わなかった。

「小川梅子の家へ」

「かしこまりました、神野社長」

小川梅子は帰宅するなり、胸の内がむずむずして仕方なかった。

考えれば考えるほど愉快で、明日には凛奈が各プラットフォームで叩かれまくり、泣きながら自分に縋りついてくる――そんな光景まで勝手に出来上がっていく。

「凛奈、凛奈……あたしと張り合おうなんて、まだまだ甘いのよ」

梅子は酒をひと口含み、口角を吊り上げた。

そのとき――ピンポーン、と唐突にチャイムが鳴った。

こんな時間に、いったい誰?

梅子はグラスを置き、玄関へ向かって覗き穴を覗く。

外には黒いスーツの男。背...

ログインして続きを読む