第9章

そう言いながら、黒宮司奈は壁に頭をぶつけようとした。橋本美子が慌てて腕を伸ばし、ぎゅっと抱きとめる。胸が痛むほど、かわいそうでたまらない。

凛奈の瞳の奥に、意地の悪い笑みが一瞬よぎった。わざと声を張り上げる。

「ちょっと言われただけで耐えられないの? じゃあ、自分のお義兄さんとベッドで転がってたときは、どうして恥ずかしくならなかったの」

『自分のお義兄さんと——』という一言が、周囲の視線を一気に引き寄せた。患者も家族も、看護師や医師までもがこちらを振り向き、病室の入口には野次馬が押し寄せてくる。

「お姉ちゃん、何言ってるの!」

黒宮司奈は怒りで顔を真っ赤にした。

橋本美子も声を荒...

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