第122章 自ら鉤にかかる

結局、天宮星羅は観念したように釣り竿を手に取り、船縁へと歩み寄った。

果てしなく広がる海原を前に、胸の奥がざわつく。

釣りなど一度も経験がない。キャスティングのやり方さえ分からず、一条拓海の見よう見まねで、ぎこちなくラインを放ってみる。

餌のついたフックは放物線を描くこともなく、力なく空を切り、「ぽちゃん」という情けない音を立てて二メートル先の水面に落ちた。水飛沫さえ上がらない。

横で見ていた一条拓海は、もどかしそうに頭を掻きむしるが、近づく勇気はないらしく、遠巻きに声を張り上げた。

「手首のスナップだ!」

「違う違う、投げるんじゃなくて振るんだよ!」

「もっと竿を高く上げて!...

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