第129章 お嬢様を放せ

天宮星羅は、瞬く間に冷静さを取り戻していた。

身なりを整え、乱れた髪を直してから、ようやく扉へと歩き出す。

黒崎蓮の視線は、まるで釘付けにするかのように彼女を捉えて離さない。服を纏い、靴を履くその一挙手一投足を追う彼の黒眸には、嵐のような激情が渦巻いている。

だが、天宮星羅はそんな彼を完全に無視し、その脇を強引にすり抜けた。

肩がぶつかっても、彼女は一瞬たりとも足を止めない。

一条拓海は二人の間に漂う、今にも爆発しそうな一触即発の空気に頭皮が粟立つのを感じ、慌てて後を追った。

船室を飛び出すと、湿った潮風が顔を打つ。

すぐ近くの、夜の闇に包まれた海面に、一隻の純白のクルーザーが...

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