第172章 なぜ彼が銃を!

その一瞬、時はあたかも細く引き伸ばされた絹糸のようになった。

満面の笑みを張りつかせ、「歩くATM」への自己紹介を始めようとしていた三又公雄(みつまたきみお)の体が、ぎくりと硬直する。

彼がVIPゲストとして崇め奉っていた男もまた、足を止めていた。

黒崎蓮はわずかに首を巡らせる。

「其処にいるのは誰だ」

三又公雄の心臓が早鐘を打ち、背筋に冷や汗が噴き出した。

「空耳です、きっと空耳ですよ!」彼は必死に手を振って否定する。「この山は風が強くて、ヒューヒュー鳴りますからね。人なんていやしませんよ! さあさあ、中へどうぞ。とびきりの山茶を淹れさせていただきますから!」

黒崎蓮は動かな...

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