第213章 五年前、助燃剤

立ち上る湯気の茶の香りも、個室に立ち込める重苦しい空気を払拭することはできない。

しばらくの間、天宮星羅は硬直した姿勢のまま、視線を足元の絨毯に転がる黒いスマートフォンの画面に釘付けにしていた。

「どうした、黙りこくって」

天宮直人は手際よく急須に湯を注ぎ足しながら、悠然と問いかける。

星羅の指先がわずかに震える。胃の底からせり上がってくる吐き気を必死に抑え込もうとしていた。

彼女が屈んでスマートフォンを拾おうとした瞬間、その手首を温かく力強い手が掴んだ。

「俺に見られたくないのか?」天宮直人はもう片方の手で、床の携帯を拾い上げた。

「見ないで」星羅の声は酷くかすれていた。「…...

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