第217章 全世界最大の大馬鹿者

月明かりの下、鋭い針先が冷たく光っている。

それは、西園寺麗華の頸動脈まで、あとわずか五センチの距離に迫っていた。

「い……いや……」

西園寺麗華は目を極限まで見開き、恐怖に引きつった顔で後ずさりする。

「殺してよ……いっそ今すぐ殺せばいいじゃない!」

天宫直人は鼻で笑うと、指先でゆっくりとピストンを押し込み、青い薬液を数滴絞り出した。

「殺す? それだけで済むとでも? それでは、天宮家がこの五年間背負わされてきた、一つまた一つと積み重なった血の借りを返せないだろう」

その凍てつく針先が、まさに皮膚を突き破ろうとした瞬間だった。

轟音と共に——

数条の強烈なヘッドライトの光...

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