第百三章

午後、峥がやって来た。

「紬、さっき志波先生に会ってきたよ。経過は順調だから、明後日には退院して自宅療養に移れるって」

峥は持参した花を花瓶に生け、ソファに座る蓮を一瞥してから言葉を継いだ。

「前に住んでたマンションは少し都心から遠いだろう。よかったら、俺の……」

「彼女には帰る家がある」

ずっと沈黙を保っていた蓮が口を開き、底知れぬ響きを帯びた声で峥を見た。

「明後日退院したら、俺が家に連れて帰る。お前の世話になる必要はない」

その言葉に、峥は眉をひそめた。

「蓮、紬がどうして家を出て一人暮らしを始めたのか、忘れたとは言わせないぞ」

「それに、彼女はまだ回復期だ。日常生活...

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