第百七章

一日中、蓮は上の空のまま過ごし、すっかり日が落ちてからようやく会社を後にした。

あの伽藍堂のような家には帰りたくなかった。あてもなく車を走らせて夜の街をさまよい、気づけば紬が暮らしていたマンションの前に車を停めていた。

「カチッ」

蓮はライターを弄り、炎を点けては消す。車体に寄りかかりながら真っ暗なベランダを見上げ、あそこに明かりが灯ることを心のどこかで期待していた。

一分、また一分と時間が過ぎていく。秋の夜風は肌を刺すように冷たいが、彼には微塵も感じられなかった。

「紬、お前は一体どこへ行ったんだ……」

ベランダを見つめたまま呟いたその時、ふいにスマホが鳴った。

『紬の行方は...

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