第百二十三章

その日の夕方。紬がアシスタントと共にビルを出て振り返ると、そこにはいつから待っていたのか、峥の姿があった。

アシスタントが警戒して一歩前に出る。紬は手でそれを制し、極めて冷静な眼差しを峥に向けた。

「何か用?」

峥は一歩近づこうと足を踏み出したが、思い直したようにそれを引っ込めた。

「会いたくないのは分かってる。でも、どうしても直接謝りたくて」

彼がここまで執着するとは思わず、紬は少し困ったようにため息をついた。

「電話でも言ったはずよ。謝る必要なんてないって」

「それに、あの時のこともわざとじゃないでしょう。もう随分前のことだし、私の中ではとうに終わったことだから」

峥は彼...

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