第127章

日が落ち始め、退勤する人々が次々とオフィスビルから姿を現す。

蓮の視線はビルのエントランスに釘付けになったまま、一瞬たりとも離れなかった。三十分後、ようやく見慣れた人影が視界に飛び込んでくる。

はっとして車を降りようとしたが、ドアを開けかけた手がふいに止まった。紬の隣を歩く男の姿に、瞳の奥で嫉妬の炎が燃え上がる。

あの男、どこまでも付き纏う気か。

紬と一迫弘樹は並んで歩いていた。一迫弘樹はごく自然な動作で彼女の手からPCバッグを受け取り、顔を寄せて何かを語りかける。

何を言ったのかは分からないが、紬の口元には微かな笑みが浮かび、その足取りはひどく軽やかに見えた。

二人が連れ立って...

ログインして続きを読む