第29章

そう思うと、紬の目頭が思わず熱くなった。

誰に責められるよりも、一番近くにいるはずの夫に信じてもらえないことが、何よりも深く心を刺した。

この三年間築き上げてきた夫婦の絆は、他人の取るに足らない一言にも及ばないというのだろうか。

紬は二歩後ずさり、これ以上蓮と言葉を交わす気力を失った。少しだけ語気を強めて言う。

「一ノ瀬社長、私の退職届を受理してください」

「退職だと? 紬、それで会社の機密を漏洩した疑いから逃れられるとでも思っているのか」

蓮の口元に冷笑が浮かぶ。その鋭い視線は紬を射抜き、このまま彼女を逃がす気など毛頭ないようだった。

紬は眉をひそめた。蓮が一体どうしたいのか...

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