第68章

その日の夜、紬は画廊のマネージャーから電話を受けた。高値で画廊を買い取りたいという人物が現れたらしく、彼女の意向を尋ねてきたのだ。

「母の画廊を買いたい人がいるって?」

紬は振り返り、壁に掛けられた油絵を見つめた。それは彼女の十八歳の誕生日に、母が自ら描いてくれたものだ。絵の中の彼女はワンピース姿で花畑に立ち、全身に眩しい日差しを浴びている。――太陽に向かって生きるように、という願いが込められていた。

あの時、母は言った。陽の光のように健やかに育ち、一生平穏で、自由気ままに生きてほしい、と。

けれど、彼女は母の願いを叶えられなかった。

「先方にはこう返事をして。母の画廊を気に入って...

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