第72章

オフィスに戻った紬は、すでに全身冷や汗に塗れていた。足早にデスクへ向かい、バッグを漁って薬のボトルを取り出す。

昨日の退院時、医師からはきつく止められていた。当分は過労を避け、感情の起伏も抑えるように、と。さもないと発作のリスクが高まるからだ。

薬を飲み、ソファに深く腰を下ろす。しばらくして、ようやく息を吹き返したような感覚が戻ってきた。だが、まだ問題は山積みだ。気を抜くわけにはいかない。

ブブッ……。

デスク上のスマホに目をやり、紬は不快感を堪えて立ち上がった。画面に表示された『村上さん』の文字を見た瞬間、心臓が嫌な音を立てる。

「村上さん、ギャラリーに何かあったの?」

電話の...

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