第87章

車が地下駐車場に到着したとき、紬はちょうど眠りから目を覚ました。隣で押し黙っている蓮を一瞥し、複雑な思いが胸をよぎる。

「送ってくれてありがとう。先に行ってて、私は……」

「降りろ」

蓮は冷ややかな顔で促した。紬が助手席から降りるのを待つや否や、真っ直ぐに歩み寄り、彼女の腕を引いてエレベーターの方へ向かう。

突然の行動に驚き、紬は無意識に腕を振りほどこうともがいた。

「やっぱり別々に行きましょう。誰かに見られたら困るし」

以前なら、二人で出かけるときも蓮は意図的に距離を置いていた。だからこそ、社内の人間は未だに二人の関係に気づいていない。

今はまさに出勤時間だ。社員に見られでも...

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