第94章

ドンッ!

個室から逃げるように飛び出してきた平沢友明は、向かいから歩いてきた男に勢いよくぶつかった。後ろめたさからひどく狼狽した様子で、平謝りする。

「すみません、前を見ていなくて、その……」

そう言いながらも、視線はちらちらと個室の方へ向けられていた。

「とにかく、わざとじゃないんです」

長居は無用とばかりに、相手が咎める気はないと見るや、平沢友明はすぐさま身を翻し、足早にレストランの出口へ向かって歩き去った。

「申し訳ございません、お客様。あの方が急に飛び出してくるのに気づけず……。もし警察をお呼びになるなら、私が」

峥は静かに手を振って、店員の言葉を遮った。

「結構です...

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