第96章

レストランへ向かう道中、蓮の心は苛立ちでざわついていた。紬が利益のために身体を売るような女ではないことなど、彼が一番よくわかっている。

ここ数年、『一ノ瀬奥様』という肩書きを背負いながらも、彼女は一度として私腹を肥やそうとはしなかった。もしその気になれば、一ノ瀬グループの内情を知り尽くしている彼女のことだ。とうの昔に莫大な富を築いていただろう。

だが、峥は違う。

二人には二十年以上にわたる絆がある。紬にとって、彼はただの幼馴染という枠に収まる存在ではないはずだ。

そう考えるほどに、蓮の心は鉛のように重くなっていく。そのとき、ふいに携帯が鳴った。

「一ノ瀬社長」

「紬の居場所はわか...

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