第10章

 冷たい風がわたしの残像をさらい、彼の散りゆく瞳孔の奥に、ゆっくりとわたしの輪郭を結ばせた。

 いまにも閉じきりそうだったまぶたが、ぎくりと跳ね上がる。干からびた喉仏が、苦しげに一度だけ上下した。――彼は、わたしを見たのだ。

 十年前と同じ、白いスーツドレス。

 わたしは見下ろし、凍って紫に変わったその顔に、ほんのわずかな嫌悪を滲ませた。

「颯斗。来世は……もう会わない」

 泣き叫ぶ怒りもない。縋りつく怨みもない。

 あるのは、ほどけた糸みたいな解放感と、完全な切り捨てだけ。きっと神が憐れんで、わたしをほんの少し、この世界に留め置いたのだろう。

 颯斗の身体がびくりと震えた。

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