第8章
「掛け布団をどかしますよ、あなた。今日は強制退院の日です」
市立の福祉病院。人で溢れ返る大部屋の天井近くに、わたしはふわりと漂っていた。目の前の男――颯斗は痩せこけて別人みたいになり、ぎゅっと目を閉じたまま、黄ばんだシーツの端を両手で掴んでいる。まるで何かを直視したくなくて、恐怖から逃げるみたいに。
太った女看護師が容赦なく掛け布団をひっぺがした。
その下。
右脚は股の付け根から下が、短い断端しか残っていない。歪んだ木の切り株みたいな肉塊が安物のガーゼで雑に巻かれ、暗赤の血と黄いろい膿がじわりと滲んでいた。
事故のとき、トラックのタイヤが――この関東のCEOの右脚を、完全...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
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