第9章

 上村。

 十年前、彼はうちのマンションの下で、決して高価ではない指輪を手に、まっすぐわたしに告白してくれた。

 けれど、体裁と利得しか見ない両親は、もっと「将来性のある圈」に食い込むために、わたしを引きずって二階の寝室へ閉じ込め、鍵を掛けた。箒と毒のある言葉で、彼を追い払って。

 翌日には、旧帝大出身という肩書きを持つ「完璧な好青年」颯斗とのデートを、問答無用で押しつけられた。

 ……そしてわたしは、本当に颯斗を愛してしまった。

 紳士ぶった顔と、優しい気遣い。その温度に縋り、ほどなくして結婚した。

 後になって耳にした。結婚式の夜、上村は駆けつける途中で事故に遭い、フロントガ...

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