第9章

 私は死を待っていた。

 だが、ジュリアンを喰らった。

 氷はもう二度と戻らない。血が灼けた。私は炉だった。

 市境に差しかかる。泥の湿地は消え去り、ネオンが闇を切り裂いた。

 この街は巨大な餌箱だった。スーツ姿の男たちがここを回している。自分たちを王だと名乗っていた。

 人の命を売り買いし、手出しできる者などいないと本気で思っている。

 車を停めた。『ベルベット・トラップ』が前方にそびえていた。窓ひとつない要塞。外には震える人間の長い列ができている。

 大柄なイタリア系の用心棒が二人、赤いロープを守っていた。分厚いコートを着込み、武器のふくらみが見える。彼らは車を見て嘲った。...

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